まだデジタルだけ?今求められるマーケティングの“高速PDCA”とは

デジタルマーケティングは、従来のマスマーケティングに比べ、はるかにPDCAを高速に回せます。しかし、“高速PDCA”は何もデジタルマーケティングに限ったものではないことをご存知でしょうか?この記事では、今後高速化するマーケティングプロセスについて、その考え方や事例をご紹介したいと思います。

デジタルマーケティングの登場によって変わったこと

デジタルマーケティングが浸透するきっかけとなった、リスティング広告とも呼ばれる検索連動型広告やアドネットワークなどのデジタル広告。その登場によって、マーケティングを取り巻く環境は大きく変わりました。

デジタル広告登場以前のテレビや新聞、ラジオによる広告手法では、広告を実施しても、誰がどれくらい反応しているかを正確な数字で把握するのは不可能でした。

しかし、デジタル広告は、表示からのクリック、そして購入やコンバージョンまで、すべての数値が定量化されています。これによって、クリエイティブごとのクリック率の違いや、ランディングページでの訴求内容の違いによるコンバージョン率の違いを正確に分析することが可能になりました。

デジタル広告のもう一つの特長は、細かなターゲティング。例えばFacebook広告では、登録しているユーザーの年齢、住んでいる地域、出身大学や勤務先などに応じて広告を出しわけられます。

しかも、これらの広告は、出稿したいと思えば明日からでも開始でき、金額も数百円から実施可能です。そのため、規模の大小を問わず、多くの企業が細かいサイクルでデジタル広告のPDCAサイクルを回しています。

また、最近では、マーケティングオートメーションツールの普及などによって、デジタル広告以外の領域(例えばCRM)なども同様に、細かいPDCAが定着し始めています。

このように、定量的な効果の把握と、精緻なターゲティング、そして何より、スピーディーな検証可能性がデジタルマーケティングの特長と言えるでしょう。

デジタルの手法を企業活動全体に適用することで、ビジネスのスピードが向上する

私たちPenguin Tokyoは、クライアントのデジタルマーケティング“だけ”を支援する企業ではありません。もちろん、デジタルマーケティング“も”支援します。しかし、企業活動全体を俯瞰し、ボトルネックを特定・解消することで、ビジネスのスピードを向上させ、求める成果を創出するところまでが、私たちの役割だと考えています。

その際に大事なのは、ビジネスの成否を決める重要な課題を定義することに加え(実はここができていないケースが多いのですが…)、いかに早く課題解決のための仮説検証を行うか、ということ。すなわち、いかにビジネスのPDCAを早く回すか、です。

では、具体的に、ビジネスのPDCAサイクルを早く回す、とはどのようなものでしょうか?

例えば、「リーン・スタートアップ ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす」という名著にもある、ザッポスという会社の事例がイメージしやすいかもしれません。

ザッポスはニック・スインマーンが創業した世界最大規模の靴のオンラインマーケットで、現在は買収されてAmazonの傘下企業となっています。そのザッポス創業時の有名なエピソードがこちら。

スインマーンは実験からスタートすることにした。まず、靴をオンラインで買う顧客がいるという仮説をたてる。そしてその仮説を検証するため、近所の靴店に頼んで在庫品の写真を撮らせてもらった。撮った写真はウェブに掲載し、それを誰かが買ってくれたらお店の売値で買うからと言って。《『リーン・スタートアップ ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす』(著)エリックリース(翻訳)井口耕二》

普通に考えるとオンライン購入機能を備えたECサイトのリリースを最初に目指すべきように思えますが、その前に「靴をオンラインで買う人がいるか?」というビジネスにおける重要な課題を、最小限の機能で検証しているのです。この課題をクリアできなければ、そもそも靴のオンラインマーケットというビジネスモデル自体、成功は難しいと考えたわけです。

これは新規事業立ち上げ時の逸話ですが、新商品開発やコミュニケーション施策の企画・検討、さらには、新しいWebサイトやコンテンツ制作の時にも非常に参考になります。つまり、検証したいビジネス課題仮説を、まずは仮説が検証できる範囲で切り出し、そこで得たフィードバックを戦略や戦術、施策に落とし込むのです。

マーケティング全体の高速PDCA化は既にはじまっている

私たちPenguin Tokyoは、新商品の体験価値の開発からオフライン含む施策設計や実行までを一貫して支援していますが、その根底には、このデジタルマーケティングに端を発する「いかにビジネスを高速PDCAで回すか」といった考えがあります。

例えば、新商品開発。新商品で訴求したい特長がある場合、その特長が本当に生活者の心を動かすのかどうか、そして、購買につながるのかどうか、が重要なビジネス課題になります。

業界や商材にもよりますが、通常、商品開発のプロセスは年単位でかかることが多く、現実問題として「高速PDCA化」が難しいと感じられることでしょう。

しかし、私たちがご支援をする消費財メーカーの何社かは、商品開発のプロセス自体を見直し始めています。

これまでマーケティング戦略や商品企画などの重要な意思決定は、経営陣も参加する、年もしくは半年1回の会議体で行われていました。しかし、それでは生活者や競合の変化にすばやく対応できません。

そこで、年間の会議スケジュールは維持しつつも、その間の検討プロセスを短期間で回せるようにしたのです。具体的には、経営陣とマーケターの間で、そのビジネスやブランドが抱えている根本的な課題は何かを認識合わせしたうえでその課題仮説を時間と費用をかけずに検証してしまうのです。

例えば、2-3日で被験者の調達ができる簡易定性調査サービスを利用して、アイデアレベルのコンセプトが本当に生活者に受け入れられるのかをすぐに検証したり、モノがない段階で、安価にできるリスティング広告などでコンセプトの訴求内容を変えた場合のクリック率の変化を見たりします。

これらのスピーディかつ机上の空論ではない実地検証によって得られたデータや情報を、個々の施策設計・実行だけでなく、新商品開発の方向性やマーケティング戦略の見直し・アップデートにも活用しています。

このような高速PDCA化を意識したアジャイルなマーケティングをおこなうことで、ウォーターフォール的なマーケティング手法と比べて、より顧客にフィットした戦略や戦術、施策の展開が可能なのです。

なぜ高速PDCA化が必要か

最後に、なぜ私たちがこのような取り組みをおこなっているか、その背景にある思いをお伝えします。

世の中にはさまざまな企業がありますが、スピーディーなマーケティングの実行体制を整えようとしている企業はかなり限られています。ただ、先ほどご紹介したように、私たちのクライアントをはじめ、いくつかの企業で成功事例が出てきています。

今後はこのようなスピーディなマーケティングPDCAを意識している企業と従来型のマーケティング手法に固執している企業では、業績面で大きく差が開くのではないかと考えています(もちろん、なんでもかんでもPDCAを速く回せばいいというわけではなく、本質的なビジネス課題に立脚していることが大前提なので、その点注意が必要です)

多くの企業にマーケティング手法を転換いただき、業界をリードするリーディングカンパニーなっていただきたい、それが私たちの思いです。

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