知っていますか?失敗しないオリエン資料の作り方

モノと情報が溢れる今、多くの日本人が現状に満足していると言われています。
皆さんも、『何を選んだって同じ』『わざわざその商品を買う理由がない』と思うことも少なくないのではないでしょうか。

そんな人々の“現状満足”の壁を打破し、“思わず”その商品が欲しくなるようなきっかけになるのが、優れたクリエイティブ。しかし、その優れたクリエイティブを創り出すためのプロセスは、それが企業の競争力に直結するからでしょうか、意外なほど公になっていません。

そのためか、クリエイティブ開発を依頼する側からは、こんな声がよく聞かれます。

せっかく頑張ってオリエン資料を準備したのに、エージェンシーから出てきた提案内容が想定と全く違う。私たちの思いがまったく伝わってないじゃないか。

エージェンシーから出てきたクリエイティブアイデアが、経営陣に承認されない。

など。

クリエイティブ開発にはエージェンシーの協力は不可欠です。であるが故に、クリエイティブの不満はエージェンシーに寄せられることも。しかし、本当にエージェンシーの能力が足りていないのでしょうか?

いえ、そうとも限りません。もしかしたら、依頼する側のオリエン資料に問題があるのかもしれないのです。

間違いだらけのオリエン資料

そもそも、エージェンシーにおけるクリエイティブ開発のプロセスはご存知でしょうか?

会社や担当者によっても異なりますが、多くのクリエイティブディレクターは、オリエン資料で提示されたインサイト仮説を、自らの直感や周りの反応などに頼りに、納得がいくまで再検証します。

そのうえで、複数のクリエイティブアイデアを出しながら、アイデアを下支えするロジックを、定性や定量調査などを用いて深め、確度の高いクリエイティブを作っていきます。

このように、クリエイティブ開発のプロセスの起点になるのが、オリエン資料。

しかし、クリエイティブディレクターに聞いてみると、必ずしも“よい”オリエン資料ばかりではない、との声がちらほら聞かれます。

例えば、

オリエン資料に書かれている内容は、正直すっと頭に入ってこない。ターゲット層の名称や製品の特長など、クライアントの社内では共通認識になっていても、第三者がフレッシュな目で見たときに、何だかよくわからないというケースが多い。

いろいろ情報が詰め込まれているけど、結局何が言いたいのかわからないオリエン資料が多い。こちらとしては、依頼主の要望に応えなければ、という無意識の忖度が働いてしまう。もちろん、変な忖度が働かないよう気をつけているが、情報が多いと、得てして、角の取れた、あまり面白くもないアウトプットが出てきてしまいがち。

などなど。

このように、依頼主がつくるオリエン資料が、クリエイティブディレクターの求めるものとやや乖離しているようです。

事実、とある会社では、ペルソナやカスタマージャーニー、その根拠となる定量/定性調査結果、さらには、商品性能評価データなど、ありとあらゆる情報を詰め込んだオリエン資料を出していた、ということも。

そのようなオリエン資料を受け取ったエージェンシーは、どうなるでしょうか?

本質的な部分が些末な情報で覆い隠れ、逆にその些末な情報によって不必要な知識が知らず知らずのうちにクリエイティブディレクターの頭にインプットされてしまう。“クリエイティブ・ジャンプ”を目指そうとする一方で、提示された情報に忠実なものを目指さないといけない、という力学も働く。結果的に、生活者のことをより深く知っているはずの第三者がクリエイティブを作る意義が失われてしまうことも。

では、依頼主側は極力情報を提示しない方がよいか、といえば、そういうわけでもありません。

というのも、依頼主側しか持ちえない情報があるからです。例えば、製品の開発ストーリーや技術的背景・特性、および一次情報で取得した消費者インサイトなど。こうした情報は、エージェンシー側が持ちえないため、的確に伝えられれば、非常に強力な武器になります。

より良いクリエイティブ開発のために – オリエン資料チェックポイント –

では、具体的にどのようなオリエン資料であれば、質の高いクリエイティブが生み出せるのでしょうか?

ずばり、エージェンシーがオリエン資料に求めているのは、「誰をターゲットに(①)、どのような態度・行動変容を起こしたいのか?(②)それはどんな根拠・製品特長に基づいているか?(③)」です。

極めてシンプルですが、いかに①②③の問いに対して、無駄なものをそぎ落として、いかにシャープな仮説を提示できるか、が肝になります。

さて、このオリエン資料に必要な3つの情報、どのように記載すれば、エージェンシー側により確実に“伝わる”ものになるのでしょうか?

以下、これまでの経験から私たちが考える、オリエン資料作成時のチェックポイントを簡単にご紹介します。
皆さんの会社で、エージェンシーにオリエン資料を出す前にぜひチェックしてみてください。

1. そもそもの目的は明確か
クリエイティブ開発で依頼主とエージェンシーが協働していくにあたり、そのクリエイティブを通じてもたらしたいビジネス上の “目的” を共有することが何よりも大事です。

アテンションとしてまず認知を獲得したいのか、新規客のトライアルを促したいのか、など、誰のどんな態度・行動変容を起こしたいのか、明記すること。依頼する側にとっては極めて当たり前のことも、実はきちんと言語化されておらず、“なんとなく”の雰囲気で走り出してしまうことも多い。しかし、目的が見えないままに検討が走り出してしまうと、間違った方向に走っていたとしても、気づいたときにはもう後戻りはできないことも。

なので、忘れずにきちんとビジネスにおける“目的”をオリエン資料に書くことを心がけましょう。

2. “One Market, One Message, One Outcome”になっているか
良いクリエイティブは、3つのOne(One Market・One Message・One Outcome)の原則に則ると言われます。

この原則、頭では理解していても、これまでの背景や経緯、担当者の想いなどもあって、あれもこれも盛り込みたくなるのが人間の性。ただ、そこはぐっと堪えて、何が本質的に伝えたいことなのか、その結果どのような状態にしたいのか、シンプルに考え、言葉にすることが必要です。

そうでないと、依頼主側は“よかれ”と思って付記したことが、受け取る側に解釈の幅や選択肢を与えてしまうことになり、両者の認識齟齬の原因になってしまいます。

なお、一つに絞り込むときには、俗にいう、POD(Point of Difference:顧客価値の源泉、かつ競争優位のある特長)を、定性調査などで事前に見極めていることがポイントになります。もし、一つに絞り込めない場合は、前のステップに戻って、再度PODを検討・検証することから始めましょう。

3. パッと見で伝わるか、小学生でもわかるか
日常的に多くの情報に触れ、文字情報のコモディティ化が激しい今、一般の人にとって長い文章を読むことは苦痛になっています(この記事も気をつけないとですね)。そして、よほどその人の欲求に根差していないと、スルーされたり、読んでいる最中から内容が忘れさられたりすることも。

それは、オリエン資料も一緒です。

オリエン資料の内容がスルーされないように、先述のクリエイティブ開発の目的や3つのOne原則などのキラーセンテンスは特に、パッと見てわかる、平易で簡潔な文章にすることを強く心がけましょう。

キラーセンテンスを考えるうえでのTipsとしては、文字数を15文字以内に収まっているか、小学生高学年の子供が前提知識もなくわかるか、といったことを意識するとよいでしょう。

それでも、上申が通らない。そのわけは?

完璧なオリエン資料を作成した、想定以上のクリエイティブ案も出てきた、これはイケる!
と思っても、なぜか上申が通らない。

そういった状況に陥っていらっしゃるマーケターの方もいるのではないのでしょうか。

それは、もしかしたら、その事業やブランドが抱える本質的な課題を、経営陣と合意できていないのかもしれません。

本質的な課題とは、その課題が解決されれば、その事業やブランドの業績が大幅に改善する見込みの高い取組のことです。

提案したクリエイティブが否決されるのは、その本質的課題がコミュニケーションによって解決できない類のものだったり、コミュニケーションによって起こしたい態度・行動変容が本質的課題に立脚していない、または貢献度合いが低いことだったりが、原因であるケースが多いものです。

こうした問題は、エージェンシーにオリエンを実施する以前の話であり、まずは、何が本質的な課題なのか、社内で共通認識を醸成することが最優先事項になります。それが結果的に、クリエイティブ開発のプロセスをスムーズにするだけでなく、より質の高いクリエイティブを生む近道であったりします。

以上の点を踏まえ、オリエンを実施すれば、エージェンシーのよさを十分に引き出せるようになり、ビジネスにインパクトを与える、質の高いクリエイティブが生まれることでしょう。

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